任意後見
任意後見制度とは
任意後見制度について
「任意後見制度」は、本人が十分な判断能力があるうちに,将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を、公正証書で結んでおくというものです。そうすることで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもとで、本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能になります。
任意後見契約は、公正証書で作成される必要があります。「任意後見契約に関する法律」では、契約の成立・効力の発生・終了等について厳格な規定を設けて、任意後見制度が適正に運用されるようになっています。そして、任意後見契約の締結には、公証人が必ず立ち会い、本人の意思や代理権の範囲などを十分に確認します。そして、任意後見契約が締結されたら、公証人によって、その契約の当事者と代理権の範囲が登記されます。
また、任意後見契約は締結しただけの段階では効力は発生しません。本人の判断能力が衰えた段階で、家庭裁判所において、任意後見人を監督する人(任意後見監督人)が選任されることによって、任意後見契約が発効します。後見監督人は、後見人が契約どおりに後見事務を行っているかを監視する人で、自ら任意後見人を監督できない本人に代わって、契約を監督することになります。
ただし、任意後見の制度を利用しなくても、本人の判断能力の減退は委任契約を無効にするものではないので(民法六百五十三条)、民法上の委任契約により自己決定権の尊重を実現することは可能なように思われる。
民法 六百四十三条 (委任)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
民法 六百五十三条 (委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
- 委任者又は受任者の死亡
- 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
- 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
しかし、民法上の委任契約では、本人の判断力に問題がない間は、自ら受任者を監視して権限濫用を防止することが可能ですが、本人の判断力が低下してしまった後ではこれは非常に難しくなります。そこで任意後見制度では、本人の保護を図る趣旨で、本人に代わって受任者を監督する任意後見監督人の選任が、任意後見契約の効力が生ずるための要件となっています。
この制度の意義は、
- 自ら契約内容を決められ、
- 契約を公正証書にすることで適法かつ有効な契約の締結を担保し、
- 本人の判断力低下後には、任意後見監督人が、契約とおりにきちんと事務を行っているかを監督するということにあります。