任意後見の実務
任意後見契約の実務について
任意後見契約を締結するためには、その前段階の準備として確認すべきことがあります。
任意後見契約は、本人の判断力が十分にあるうちに契約をしますので、本人が成年後見制度の内容について十分に理解している必要があります。任意後見契約は、本人の判断力が不十分になったときから始まりますが、その目的に応じて、契約の内容を考慮する必要があります。
また、本人の意思確認の前提として、契約能力(判断能力)の確認が必要になります。判断能力が不十分な場合には任意後見ではなくて法定後見ということも考えられます。体力が弱って,公証役場に出向くことができない場合には,公証人が,自宅や病院に出張して公正証書を作成することができます。なお,この場合には,手数料が50%加算されるほか,日当と現場までの交通費が加算されます。
署名ができない場合は、公証人がその旨、公正証書に記載します。 印鑑登録がされていない場合は、登録をする必要があります。
後見人を誰に頼むのか?
誰でも成人であれば,任意後見人にする事が出来ます。身内の者でも,友人でも全然問題ありません。
ただし,法律が相応しくないと定めている事由のある者(破産者,本人に対して訴訟を提起した事がある者,不正な行為,著しい不行跡のある者その他任意後見人の任務に適しない事由のある人,例えば金銭にルーズな人等)はダメです。弁護士,司法書士,行政書士等の専門家に依頼してもよいし,また,法人後見(例えば,社会福祉協議会等の社会福祉法人,リーガルサポートセンター)を利用することもできます。なお、後見人を依頼する場合(特に専門家でない親族や知人に頼もうと考えている場合)は、以下の点に特に注意が必要です。
- 成年後見制度について、きちんと理解しているか
- 家族、特に配偶者も賛成してくれているか
- お金にこまっていないか
- 住所があまり遠方でないか
- 仕事はとても忙しくないか、転勤等で引っ越すことはないか
- 20歳程度以上は年下か、健康面に不安はないか
- 報酬についての話し合いはきちんとできているか
また、任意後見人は,複数でも構いません。この場合には,各自が任意後見人としての権限を行使できるとするか,共同してのみその権限を行使できるとするか,どちらかに決めなければいけません。そして,前者の場合には,権限の範囲を分掌する場合と,分掌しないで,単に各自がその権限を行使できるとする場合があります。 なお,任意後見人を予備的につけることも,可能です。
たとえば,Aさんに任意後見人を頼むけど,もしAさんが死亡・事故・高齢等の理由でその職務をとれなくなったときは,予備的にBさんにお願いしておきたいということもできます(ただし,任意後見契約締結後,その登記をする際に,予備的受任者として登記することが認められていないので,契約の形式としては,受任者としてAさんとBさんの両名を選任しておき,Aさんに上記のような事情が発生したときに,Bさんの職務が開始されるように定めることになります。)