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遺言信託

◆遺言信託とは

 遺言信託は、「特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨、並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法」(信託法3条2号)。と定義づけされています。
 分かりやすく言うと、遺言という方法によって、遺言者(=委託者)が信頼できる者(=受託者)に対し、特定の目的(=信託目的)に従って委託者の指定する財産(=信託財産)を管理・給付・処分する旨を定めることにより設定する信託のことをいいます。




◆遺言信託のメリット

・遺言の内容をより確実に実現することができます。

 例えば、親亡き後に障がいのある子の生活を保障したい場合、多くは遺言の中で、負担付贈与または負担付遺産分割という形で解決が図られてきました。つまり信頼できる者(例えば相続人や親族)を受遺者として相応の財産を相続や遺贈する代わりに、この受遺者に、残された障がいを有している子の生活の支援を担わせるという約束をさせることで、要保護者の生活や福祉を守ろうとしました。しかし、受遺者と受益者とは利益が相反することがあったり法的な監督者もなく、義務を履行しない等トラブルが発生しやすい背景的なものがありました。
 これに対して、遺言信託だと受託者に様々な義務・責任が生じ受託者に信託監督人を付することもでき受託者を監督することもできます。また信託財産は、受託者名義となりますが、受託者は自由に処分することができず、信託目的に拘束されます。例えば、信託財産が不動産で、この不動産に受遺者を居住させると信託目的に記載されている場合、受託者は当該不動産を売却、賃貸させることができません。
 
・資産承継問題への対応 

 遺言であれば、自己の資産を誰に相続させるかという一世代(1回限りの財産の移転)までしか資産の承継先を指定できません。しかし、信託の仕組みを導入することで、民法の法定相続の概念にとらわれない柔軟な承継先の指定が何段階(何世代)にもわたって可能になります。
 例えば、上記事例の障がい者である子(受益者)に相続人がなく、その死後国庫に帰属することになる財産(残余財産)を、受益者死亡後、遺言者や受益者を親身になって世話した特定の個人や特定の福祉団体に遺贈することもできるのです。
 
・成年後見制度の限界を補完することが可能

 後見人の業務は、一般に「財産管理」と「身上監護」の2つに大きく別けることができます。
「財産管理」とは、例えば、預貯金お管理・払い戻し、公共料金の支払い、不動産の売買・賃貸契約など重要な財産の管理・処分、遺産分割・相続の承認・放棄など相続に関する財産の処分などがあげられます。
 また、「身上監護」とは、日常生活や病院などでの療養看護に関わる法律行為で、例えば介護サービスの利用契約・要介護認定の申請・福祉関係施設への入所契約などがあげられます。
このように「財産管理」・「身上監護」の内容は広範囲で手間もかかり後見人の負担は過大なものと言えるでしょう。特に親族後見人の場合、専門職後見人とは異なり知識や経験が少ないことから後見人業務の負担がより過大になると思われます。
 そこで、信託制度を利用することにより身上監護を後見人が担い、財産管理を信託受託者が担うという役割分担をすることで、親族後見人の負担を軽減することが可能です。
お問い合わせ 行政書士:佐藤浩史が担当しております。